催眠強盗(解決編)


 
 口は完全にプロの仕業であった。
私たちが盗られたものは、現金と貴金属だったのである。
パスポートやクレジットカード、トラベラーズチェックなどは一切が無事であった。
ちまたでは日本人のパスポートは偽造され多額の金で売買されているというのに
犯人グループはそんなものには一切触れなかった。

 それは現金化をするのに一定のリスクを負わなければならないという点を挙げられる。
クレジットカードは比較的簡単ではあるが、サインの際に私の場合だと
日本人であるために漢字の名前を書かないといけない。
それにパスポートは闇に流すわけだが、その際におとり捜査官がいないとも限らない。
そういった事情を考慮すると現金には名前は書いてないし、
デジカメでも電気屋に行けば簡単に現金にできるというメリットがあった。
犯人はそこを狙ったと、ラファエロは結論付けた。

 沈した私達であったが、とりあえず観光を終え警察署を目指す事になった。
海外旅行保険、これが今一番効果を発揮する時だ。
しかし保険金を手に入れるには盗難証明を取らないといけない。
私が向かったクラクフ警察署、もちろん英語を話す警察官など存在するはずもない。
当然に見た目から異質な光を放っていた私達はいきなり警察官に呼び止められた。

「こんなところで何をしているんだ?」

 らくこのような言葉で話されたのであろう。
ポーランド語を解さない私にはもはや彼らの表情から言いたい事を判断するしかないのだ。
結局私達の言語(英語)を理解する人がいなかった私達は、
ユダヤ人が住むエリアの警察署へ行くように求められた。

 ーランドといえば第2次世界大戦時に多くのユダヤ人が虐殺された場所であるが、
今でもこの国には多くのユダヤ人が住んでいる。
ユダヤ人は古来からヘブライ語を話すのだが、最近は英語教育が進んでいて多くの人が話す。
私達はとにかくそこへお邪魔して、いきなり訴えかけた。

「ちょっと、盗難に遭ったんですが盗難証明を発行してもらえませんか?」

 かし、不幸にも私の英語を理解する人はおらず現地の人に
ズボンが破れている箇所を訴えかけるように見せた。
すると彼らは事情を理解したようで、ちょっと待ってろと私達を別室に案内した。

 かれこれ1時間が経過していた。
ようやく来た女性は英語を話す方でまた最初から説明しなければならなかったが
彼女が来てから30分足らずで事情徴集が終わり、証明書の発行までこぎつける事が出来た。

 後に彼女はこう聞いた。
「こんなことがあってもポーランドは好きか?」
私は胸をはって答えた。
「こんな事があったのに、好きになれるほど私はタフではない」、と。
















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